逆流性食道炎について
胃酸や胃の内容物が食道に逆流することで、食道粘膜に炎症が生じている状態を逆流性食道炎と言います。胃酸が逆流する時間が長くなることや、繰り返すことで胃酸に対して弱い食道粘膜は炎症を起こしてしまいます。
主に、胸やけ、胃酸の逆流感、口の中で酸味を感じるなどの症状が現れ、食生活や運動習慣の変化により、30歳以降から起こりやすくなる傾向があります。
基本的には胃カメラ検査の所見と現れる症状から診断を行い、治療は薬物治療と生活習慣の改善が主体となります。逆流性食道炎は再発率が高いため、適切な治療を継続して行うことが重要です。
逆流性食道炎になりやすい方
逆流性食道炎は、食事習慣などの生活習慣が原因のほか、肥満の影響で発症しやすいことが分かっています。
食習慣・生活習慣の リスク
- 早食い
- 大食い
- 暴飲暴食
- よく噛まずに飲み込む
- 便秘
- 喫煙習慣
など
習慣的な姿勢・体型の リスク
- 肥満
- 前かがみの姿勢で長時間作業する
- 身体を締め付けるベルトやコルセットなどの服装
- 内臓脂肪型肥満
- 妊娠
- 加齢によって背中が曲がる
など
逆流性食道炎と食道がん
食道の粘膜は通常、扁平上皮という構造ですが、胃の粘膜は円柱上皮という特殊な構造から成り立っています。この円柱上皮は粘液を分泌し、胃液から胃粘膜を保護する役割を果たしています。
胃液や胃の内容物の逆流により胃液に長期間晒されると、食道粘膜が胃粘膜組織のように、円柱上皮という構造に置き換わってしまうバレット食道を引き起こすことがあります。このバレット粘膜が3cm以上認められると、食道がんを発症リスクが高まるとされています。
そのため、逆流性食道炎の状態を放置することで、食道がんの発症リスクが高まるため、適切な治療を行うことが食道がんの予防ためにも重要です。
食道がんの原因
主な原因は、胃酸の分泌過多や下部食道括約筋機能(LES)の低下、肥満や姿勢による腹圧の上昇などが挙げられます。下部食道括約筋とは、食道と胃の境目の筋肉で胃の内容物が逆流しないように締め付ける筋肉です。
その他の原因として、具体的に以下のような原因が考えられます。
- 加齢に伴う食道の運動機能低下
- 食道裂孔の緩み
- 食道裂孔ヘルニア
- 暴飲暴食や早食いによる胃酸過多
- 過度の飲酒による胃機能の低下
- 喫煙による胃酸過多・食道や胃の機能低下
- 肥満による腹圧上昇
- デスクワークや畑仕事など長時間の前かがみ姿勢
- 加齢による背骨の曲がり・猫背
- 胃の手術後に胆汁が逆流する
など
逆流性食道炎の検査・治療
問診を行い、症状や発症のきっかけ、既往症、服薬歴、生活習慣などについて丁寧にお伺いします。消化器疾患に共通する症状として、胸焼けやげっぷ、心窩部痛(みぞおちの痛み)などがあります。これらの症状がある場合には、血液検査や腹部エコー検査を行い、原因を調べます。
特に、胃カメラ検査では、食道から十二指腸までの粘膜を直接観察でき、炎症や病変の有無を調べることができます。炎症の程度や位置、バレット食道の有無が分かるほか、何らかの異常がある場合には組織の一部を採取して病理検査に出すことができるため、確定診断に繋がります。
問診と検査結果から、総合して判断し、適切な治療を開始します。まずは、逆流を引き起こしている生活習慣などを改善し、薬物療法を検討します。薬物療法では、主にボノプラザン(胃酸分泌抑制薬)、プロトンポンプ阻害薬、H2ブロッカーなどが処方されます。